レクイエムは鳴り止まないっ

レクイエム (文春文庫)

レクイエム (文春文庫)

銀座の人通りやネオンは今や途絶え、あたりは殺風景なオフィスビルの谷間に排気ガスが淀んでいるだけだ。コヨーテはいなかった。

篠田節子(2002)『レクイエム』文春文庫
評価:4

篠田節子さんの短編集を読みました。
ファンタジーのフィルターで炙り出されるリアリティ。
天才的な主人公も、英雄的な展開も、伏線の回収もない。
でも確かに入口と出口があって、なにかを心に残してく。

それはがさがさした喉の渇きのようなものだったり、
灰色の息苦しさだったり、
遠くに見える流れ星のような希望だったり。
いつかまた読み返したくなるんだろうな、と思えるビターな小説。


にしても、こういう小説ってどう創ってるんだろう。
部分的には、自分の記憶と、誰かの記憶と、祈りのようなものとで紡ぎ出しているのだろうかと想像するのだけれど、冒頭で引用した『コヨーテは月に落ちる』に関してはまったく想像がつかない。
街にコヨーテが現れる、それを追ううちに不思議なマンションに閉じ込められる。
‥‥まるで破天荒な展開。
それでいて、描かれた思いはすごいリアル。

なにかの思いを、物語として昇華させられるって、すごいなあ。